はじめに

 近年の経営環境は、コロナ禍に伴う消費動向の変化や原材料価格の高騰、人手不足問題など、多くの課題が同時進行する状況です。こうした中で、中小企業が持続的に成長を遂げるためには、国や自治体が用意している補助金や助成金を有効に活用し、自社の強みを活かし、新規事業などで事業成長の可能性を高めることが不可欠です。
本稿では、中小企業経営者の皆様が最新の補助金等を活用して経営力強化するためのポイントを、明日から取り組める実践的な手順とともに、具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。

1.最新の主な補助金の概要

 国や各省庁は、中小企業向けに多種多様な補助金を用意しています。代表的な施策を以下の表にまとめました。近年では、中堅企業に対して交付する補助金が増えています。

補助金名 主な対象事業 補助率・補助上限 参考URL
ものづくり補助金 革新的な新製品・新サービスの開発や設備投資など 補助率 1/2~2/3、
上限750~4,000万円
ものづくり補助金総合サイト
省力化補助金 人手不足解消に効果のある省力化投資 補助率 1/2~2/3、
上限300万円~1億円
省力化補助金
ポータルサイト
小規模事業者持続化補助金 小規模事業者の販路開拓に関する取り組み 補助率 2/3

上限50~250万円

商工会議所地区

商工会地区

IT導入補助金 業務効率化や生産性向上を目的とした開発を伴わないITツールの導入 補助率 1/2~3/4

上限50~450万円

IT導入補助金 公式サイト
事業承継・M&A補助金 事業承継に際しての設備投資、M&Aや経営統合後の専門家を活用する事業 補助率1/2~2/3

上限800~1000万円

事業承継・M&A補助金チラシ
新事業進出
補助金
成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を目指す設備投資に取り組む事業 補助率1/2

上限2,500~9,000万円

新事業進出補助金リーフレット
中小企業成長加速化補助金 売上高100億円を目指す大胆な設備投資を支援 補助率 1/2

上限 5億円

jGrants中小企業成長加速化補助金
中堅・中小成長投資補助金 中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模投資補助金 補助率1/3

上限 最大50億円

ポータルサイト

 ※各制度の詳細や公募状況は随時変更されますので、最新情報は必ず主管省庁や実施団体の公式サイトでご確認ください。

2.補助金・助成金を活用するメリットと注意点

2-1.メリット

①資金調達リスクの低減

 経営上の投資に対して国などから補助が得られるため、銀行借入や自己資金の負担を軽減できます。

②新たなチャレンジを加速

 先端技術導入や新規事業など、リスクが高い取り組みにも挑戦しやすくなります。投資回収期間が劇的に短縮されるため、次の投資への余力が生まれます。

③信用力の向上

 公的な審査を通過した実績は、金融機関や取引先からの信用力向上につながります。

2-2.注意点

①申請期間・要件に制約がある

 公募期間は短期間の場合が多く、要件が細かく定められているため、応募時期や申請要件をよく確認する必要があります。特に「対象外経費」、「対象外となる事業」に該当しないかを公募要領などで確認が必要です。

②交付決定前の支出は対象外になる

 交付決定通知が届く前に支出した費用は補助対象外となる場合がほとんどであるため、既に購入済み、または契約・発注済みの投資は補助の対象に出来ません。また、補助金は、採択率が20~80%(補助金の種類や募集回によりまちまち)と不採択となるリスクもあるため、急ぎの投資案件には不向きです。

③成果や報告義務がある

 事業計画や成果に関する報告書を提出する義務があります。賃上げを条件に申請している場合は、特段の理由なく賃上げ未実施の場合は、補助金の返還を求められる可能性があるため注意が必要です。

3.明日から始める実践ステップ

 補助金や助成金を検討し始める際、具体的にどのように進めていけばよいのでしょうか。明日から取り組める実践ステップをご紹介します。

3-1.自社の経営課題を整理する

①現状把握:

 自社の紹介、ビジネスモデル、売上推移、コスト構造、主要顧客、組織体制など、自社の状況について第三者が理解できるようにわかりやすくまとめます。

②課題抽出:

 新規事業立ち上げ、人材育成、IT導入など、どの分野が緊急課題か整理しましょう。ご自身のビジネスで「不便」「手間がかかる」「非効率」「めんどくさい」部分が経営課題である場合が多くあります。

 
  【具体例】
  例えば、ある製造業のA社では売上の推移を可視化したことで、原材料価格の高騰が利益率を圧迫していることが明確になり、設備の省エネ化や効率化設備への投資を検討することができました。
 

ワンポイント

 経営数値の分析には、中小機構(中小企業基盤整備機構)が提供している「経営自己診断ツール」などを活用すると、決算書の数値を転記するだけで、簡単に他の中小企業と自社の財務状況を比較出来ます。比較することで自社の課題がみえてくることもあるでしょう

 参考;経営自己診断ツール 公式サイト

3-2.利用可能な補助金・助成金をリスト化する

①公募情報の収集

 経済産業省・中小企業庁が公開している情報、商工会議所や中小企業基盤整備機構の地域支援情報をチェックします。

②jGrantsの活用

 補助金申請専用ポータル「jGrants」やミラサポplusを利用し、該当しそうな補助金情報を検索します。

ワンポイント:

 jGrantsの利用には、gBizIDプライムアカウントが必要です。取得は無料なので、まだの方は早めに取得しておきましょう。
gBizIDプライム取得
jGrants 公式サイト

3-3.事業計画を策定する

①目的と目標設定

 補助金を活用したい新規事業などの取り組みについて、定量的かつ具体的で、実現可能性の高い目標を設定します。

②実行プロセスと予算管理

 導入する設備やITシステムの費用見積、スケジュール、リスク対策など、具体的に落とし込みます。

③専門家の活用

 商工会議所、商工会などの経営窓口相談や、中小企業診断士などの専門家に相談し、客観的なアドバイスを受けます。中小企業診断士は下記から検索が可能です。
中小企業診断士検索サイト

 

図:事業計画策定の流れイメージ

  経営戦略・ビジョン
    ↓
  課題・解決策の設定
    ↓
  スケジュール化・予算化
    ↓
  実施計画・KPI設定
    ↓
  申請書類作成

 

3-4.申請書類作成・締め切り管理

①公募要領とテンプレートの確認

 中小企業庁や補助金ごとの公式サイトで公開されている公募要領および申請書の様式をダウンロードし、必要事項を把握します。

②締め切り管理

 公募期間や提出期限、必要な添付書類を一覧にまとめ、漏れがないようにします。

4.活用事例:

4-1小規模事業者持続化補助金

事例①:地域密着型の飲食店がテイクアウト事業を強化

・導入内容:テイクアウト用のパッケージ改善、専用WEB予約システム導入
・補助金額:最大50万円(販路拡大に関する取り組み)
・効果:売上がコロナ禍以前より回復し、客単価も向上。補助金を活用した取り組みが話題となり、地域での認知度もアップした。

4-2 ものづくり補助金

事例②:地方の小規模な製造業が生産性を改善した例

・導入内容:最新鋭の小型加工機械と生産管理ソフトウェアを導入
・補助金額: 750万円(総事業費1,125万円のうち補助率2/3 税別)
・導入後の効果

    ・生産時間が約40%短縮し、人手不足が解消された
    ・製品精度が向上し、取引先からの信頼性向上と新規受注の獲得につながった
    ・設備投資に対する投資回収期間が約半分に短縮され、次の投資へ回す余裕が生まれた

    <注意>令和7年度実施のものづくり補助金では、上記のような生産プロセスの改善は補助対象となり、代わりに中小企業省力化補助金一般型が新たに実施されており、同補助金に該当するかどうかを検討することになります。

5.最新の国の中小企業支援策について

経済産業省以外にも、総務省や厚生労働省などが随時新しい支援策を打ち出しています。以下のような施策が活用できないか検討しましょう。

ローカル10000プロジェクト_2

5-1.ローカル10000プロジェクト

  地域の人材・資源・資金を活用した新たなビジネスを立ち上げようとする事業者の初期投資費用を支援する取り組み。地域密着型事業であることが必要。

  参考:ローカル10000プロジェクトポータルサイト

5-2.人手不足解消に向けた生産性向上支援

 厚生労働省では人材確保や働き方改革を後押しする助成金制度を展開しています。

①人材開発助成金

 従業員の人材育成、スキルアップに活用できる助成金です。

 参考:厚生労働省 人材開発支援助成金公式サイト

②業務改善助成金

 生産性向上に資する設備投資等を行うとともに、事業内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。

 参考:厚生労働省 業務改善助成金公式サイト

6.まとめと今後の展望

 国や自治体の補助金・助成金は、新たな事業に挑戦する足がかりを得る上で有力な選択肢です。しかし、その一方で申請期間や要件、報告義務などの「面倒な作業」もかなり伴うため、事業実施が確実に可能かどうか、誰がいつ実施できるかを具体的に検討の上、綿密な事業計画の策定が不可欠です。また、事業実施に必要な資金は補助金交付よりも先に必要になるため「つなぎ資金」が必要となる場合は、資金調達計画も必要となります。
特に今後は、物価や人件費の上昇、金利上昇による資金調達コストの増加など、コストアップ要因にも十分配慮した計画立案が必要です。輸出企業を顧客にもつ場合は、米国の関税政策により急に需要が低迷するなどのリスクも考慮する必要があります。

これらの不確実な時代だからこそ、公的支援を活用しながら経営の発展につなげていく必要があるのではないでしょうか。

明日から実践できるポイント

1.最新情報へのアクセスを確保しよう

 中小企業庁、経済産業省、商工会議所などの公的機関サイトをブックマークしいつでも確認できるようにしましょう。また、ミラサポプラスに登録して新しい補助金に関するメールマガジンを購読してみましょう。

2.gBizIDプライムアカウントを取得しよう

 電子申請に必須です。早めに取得しましょう。無料で取得できます。

3.事業計画を立てよう

 新規事業に取り組む前に、競合との差別化ポイントをどうするか、投資の規模や金額は妥当か、増加する経費や減少する経費は具体的にいくらか、減価償却費を含めて利益はどのぐらい増えるのか、受注見込の確度はどの程度かなどの観点から綿密な事業計画を立てる必要があります。小規模事業者持続化補助金など、金額規模が比較的小さく申請しやすいものから始めてみるのも有効です。

 もしご自身での申請に不安がある場合は、商工会議所や中小企業診断士などの専門家へ相談することで、申請書の作成や事業計画立案を円滑に進められます。

参考情報

 

執筆者プロフィール

小野田直人
ハイブリッド経営サポート株式会社 代表取締役。
「補助金活用支援会Ⓡ」「クラウド経営顧問Ⓡ」「技術コンサル」「実践ビジプラン」など、複数の中小企業向け経営支援サービスを提供し、企業が補助金を活用して成長を加速するための伴走支援を行っている。