1.なぜ社員は「指示待ち」になるのか?

職場でよく聞く「最近、指示待ち社員が増えた」「自発性が感じられない」

——このような“やらされ感”の蔓延は、企業の生産性や創造性を著しく損ないます。

この状態を根本から変えるには、単なるスキル研修や制度の見直しだけでは不十分です。特に今、企業に求められているのは、組織文化そのものの変革なのです。そして、そのカギを握るのが、「内発的動機づけ(Intrinsic Motivation)」です。

 

2.社員が自ら動く「内発的動機づけ」とは?

アメリカの心理学者デシとライアンが提唱した「自己決定理論」では、人が本気で動くためには、次の3つの心理的欲求を満たすことが必要だと言っています。

① 自律性(自主的に動く)

社員自身が「自分の意志でやっている」と感じること。指示されたからやるのではなく、自らの判断で動いていると実感できる状態です。

② 有能感(成長を実感する)

自分の行動や努力が成果に繋がり、「できるようになった」と感じること。社員が自分の成長を実感できる環境が必要です。

③ 関係性(仲間とのつながり)

会社の中で「自分は受け入れられている」「周りとつながっている」と感じられること。安心して働ける環境が土台になります。

この3つが満たされると、社員は報酬や評価だけではなく、「自分が意味を感じるから頑張る」ようになります。

 

3.VUCA時代に求められる「自ら動く社員」

かつての日本企業は「管理」や「年功序列」で安定していました。しかし、VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)といわれる今の時代には、自分で考え動く社員が必要です。自分から動く社員ほど、生産性や創造性が高く、離職率も低いことがわかっています。つまり、これからの経営では「人を管理する」より「社員が自ら動く仕組み」を作ることがより、重要といえるでしょう。

 

4.「内発的動機づけ」で変わる組織文化

やらされ感のある組織では、上司からの一方的な指示や過度な数値管理が蔓延しており、

自律性も有能感も関係性も奪われています。

この状態では、社員はリスクを避け、最低限のことしかやらなくなります。

逆に、内発的動機づけを促進する文化を育てると、社員が自発的に考え、動き、挑戦するようになります。

それは、単なるやる気を超えて「組織の目的を自分ごととして受け止める」ことにもつながります。

 

5.社員のやる気を高める3つの視点

「内発的動機づけ」を根付かせる具体的な方法をお伝えします。

① 自律性を育てる

  • 「どうやるか」を社員に任せる
  • 上司は「指示する人」ではなく、「問いかける人」になる
  • マニュアルよりも「なぜやるか」という目的を伝える

② 有能感を実感させる

  • 小さな成功をしっかり認める
  • できることより「できるようになったこと」を評価する
  • 前向きなフィードバックを習慣化する

③ 関係性を深める

  • 朝礼やミーティングで雑談や感謝を取り入れる
  • 部門を超えた交流の機会(勉強会やランチ会)をつくる
  • 経営理念を社員が共感できる言葉として再構築する

 

まとめ

社員の“やらされ感”をなくすには、報酬や制度以上に「人間の心理的欲求」を満たす環境が重要です。

心理学者エドワード・デシはこう述べています。

「人は自律的であるときに最も有能になれる」

制度の見直しより、まずは日々のコミュニケーションを変えてみませんか? 「自律・成長・つながり」を大切にすることで、会社は大きく変わります。

 

著者紹介

小泉 篤史

「経営と現場をつなぐ場づくりの専門家」

組織がまとまらず本来の力を発揮できない――。こうした課題を抱える企業に対し、対話を通じて経営者と社員の距離を縮め、組織の自律性を高めることで成長を加速する支援を行う。

中小企業診断士、組織開発研究会幹事、薬剤師、健康経営エキスパートアドバイザー、ファシリテーション塾認定講師