専門家コラム「 ”やらされ感” をなくす組織づくり―社員が自分から動き出す会社へ」(2025年4月)
1.なぜ社員は「指示待ち」になるのか?
職場でよく聞く「最近、指示待ち社員が増えた」「自発性が感じられない」
——このような“やらされ感”の蔓延は、企業の生産性や創造性を著しく損ないます。
この状態を根本から変えるには、単なるスキル研修や制度の見直しだけでは不十分です。特に今、企業に求められているのは、組織文化そのものの変革なのです。そして、そのカギを握るのが、「内発的動機づけ(Intrinsic Motivation)」です。
2.社員が自ら動く「内発的動機づけ」とは?
アメリカの心理学者デシとライアンが提唱した「自己決定理論」では、人が本気で動くためには、次の3つの心理的欲求を満たすことが必要だと言っています。
① 自律性(自主的に動く)
社員自身が「自分の意志でやっている」と感じること。指示されたからやるのではなく、自らの判断で動いていると実感できる状態です。
② 有能感(成長を実感する)
自分の行動や努力が成果に繋がり、「できるようになった」と感じること。社員が自分の成長を実感できる環境が必要です。
③ 関係性(仲間とのつながり)
会社の中で「自分は受け入れられている」「周りとつながっている」と感じられること。安心して働ける環境が土台になります。
この3つが満たされると、社員は報酬や評価だけではなく、「自分が意味を感じるから頑張る」ようになります。
3.VUCA時代に求められる「自ら動く社員」
かつての日本企業は「管理」や「年功序列」で安定していました。しかし、VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)といわれる今の時代には、自分で考え動く社員が必要です。自分から動く社員ほど、生産性や創造性が高く、離職率も低いことがわかっています。つまり、これからの経営では「人を管理する」より「社員が自ら動く仕組み」を作ることがより、重要といえるでしょう。
4.「内発的動機づけ」で変わる組織文化
やらされ感のある組織では、上司からの一方的な指示や過度な数値管理が蔓延しており、
自律性も有能感も関係性も奪われています。
この状態では、社員はリスクを避け、最低限のことしかやらなくなります。
逆に、内発的動機づけを促進する文化を育てると、社員が自発的に考え、動き、挑戦するようになります。
それは、単なるやる気を超えて「組織の目的を自分ごととして受け止める」ことにもつながります。
5.社員のやる気を高める3つの視点
「内発的動機づけ」を根付かせる具体的な方法をお伝えします。
① 自律性を育てる
- 「どうやるか」を社員に任せる
- 上司は「指示する人」ではなく、「問いかける人」になる
- マニュアルよりも「なぜやるか」という目的を伝える
② 有能感を実感させる
- 小さな成功をしっかり認める
- できることより「できるようになったこと」を評価する
- 前向きなフィードバックを習慣化する
③ 関係性を深める
- 朝礼やミーティングで雑談や感謝を取り入れる
- 部門を超えた交流の機会(勉強会やランチ会)をつくる
- 経営理念を社員が共感できる言葉として再構築する
まとめ
社員の“やらされ感”をなくすには、報酬や制度以上に「人間の心理的欲求」を満たす環境が重要です。
心理学者エドワード・デシはこう述べています。
「人は自律的であるときに最も有能になれる」
制度の見直しより、まずは日々のコミュニケーションを変えてみませんか? 「自律・成長・つながり」を大切にすることで、会社は大きく変わります。
著者紹介
小泉 篤史
「経営と現場をつなぐ場づくりの専門家」
組織がまとまらず本来の力を発揮できない――。こうした課題を抱える企業に対し、対話を通じて経営者と社員の距離を縮め、組織の自律性を高めることで成長を加速する支援を行う。
中小企業診断士、組織開発研究会幹事、薬剤師、健康経営エキスパートアドバイザー、ファシリテーション塾認定講師